過活動膀胱
過活動膀胱とは
過活動膀胱は「急に我慢できないような尿意が起こる」「トイレが近い」「急にトイレに行きたくなり、我慢ができず尿が漏れてしまうことがある」などの症状を示す病気です。
40歳以上の日本人では800万人以上がこの症状を経験していると言われています。
症状
(1)急に尿意をもよおし、漏れそうで我慢できない(尿意切迫感)
(2)トイレが近い(頻尿)、夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
人がトイレへ行く回数は、日中で5~7回、寝ている間は0回が正常と言われています。日中8回以上トイレに行き、夜間も1回以上おしっこのために起きるようなら、それは頻尿(夜間頻尿)と言えます。
(3)急に尿をしたくなり、トイレまで我慢できずに漏れてしまうことがある(切迫性尿失禁(尿漏れ))
尿意切迫感だけでなく、場合によってはトイレまで我慢できずに尿が漏れてしまうこともあります。
原因
(過活動膀胱の原因はさまざまで加齢による膀胱機能の変化などが原因のひとつですが、若い方にも発症します。脳卒中の後遺症に伴う膀胱機能の低下、前立腺肥大症による刺激なども原因となります。
過活動膀胱には、脳と膀胱(尿道)を結ぶ神経のトラブルで起こる「神経因性」のものと、それ以外の原因で起こる「非神経因性」のものがあります。
(1)神経因性過活動膀胱(神経のトラブルが原因)
脳卒中や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳の障害、脊髄損傷や多発性硬化症などの脊髄の障害の後遺症により、脳と膀胱(尿道)の筋肉を結ぶ神経の回路に障害が起きると、「膀胱に尿がたまったよ」「まだ出してはいけないよ」「もう出していいよ」「膀胱を緩めるよ(締めるよ)」「尿道を締めるよ(緩めるよ)」といった信号のやりとりが正常にはたらかなくなります。その結果、膀胱に尿が少ししかたまっていなくても尿を出そうとしたり、「締める」「緩める」の連携がうまくはたらかなかったりして、過活動膀胱の症状が出るのです。
(2)非神経因性過活動膀胱(神経トラブルとは関係ない原因)
骨盤底筋のトラブル
女性の場合、加齢や出産によって、膀胱・子宮・尿道などを支えている骨盤底筋が弱くなったり傷んだりすることがあります。そのために排尿のメカニズムがうまくはたらかなくなり、過活動膀胱が起こります。
それ以外の原因
上記以外の何らかの原因で膀胱の神経が過敏にはたらいてしまう場合や、原因が特定できない場合もあります。
いくつかの原因が複雑にからみあっていると考えられています。この原因の特定できないものや加齢によるものが、実際には最も多く存在しています。
診断
過活動膀胱症状質問票(OABSS)過活動膀胱の診断、重症度の判定に使用します。
尿検査 血尿がないか、細菌が入っていないか、炎症はないかなどを調べます。
腹部エコー検査 膀胱に残っている尿(残尿)の量や、腎臓・膀胱の形や状態、がんや結石の有無などを調べます。
排尿日誌 尿の状態をさらに知るために、排尿日誌をつけてもらいます。1日のうち、トイレに行った時刻、尿の量、などを記録していきます。排尿日誌をつけることで、その人の尿のトラブルの特徴や傾向がわかり、診断や治療をより適切に行うことができます。
尿流量測定(ウロフロメトリー)測定装置のついたトイレに排尿をしてもらいます。1回の排尿にかかる時間、尿の量、尿の勢い、排尿のパターンなどがわかります。
必要に応じて、その他の検査が行われます。
治療
過活動膀胱の治療は、まず薬物療法を行うのが一般的です。また、薬物療法は症状を軽減させる対症療法です。膀胱の刺激を抑え膀胱の容量を増やすお薬で頻尿やがまんできない尿意を抑えます。過活動膀胱のお薬は多くの種類がありますが、お薬の副作用で便が硬くなったり唾液が少なくなったりする事があるため、患者さんの症状にあったお薬を使用していきます。
また、行動療法をあわせて行うのも効果的です。「膀胱訓練」、「骨盤底筋体操」などで、機能の弱まった膀胱や骨盤底筋を鍛えることによって、尿トラブルの症状を軽くすることができます。